コンソーシアムの各構成団体 代表者(2020年東京オリンピック・パラリンピック開催当時)からのごあいさつです。
一般社団法人日本救急医学会
代表理事坂本 哲也
2020年東京オリンピック・パラリンピックでは、世界各国から関係者や観客等が多数集まり、テロ対応や多数傷病者発生も想定した開催会場周辺の救急医療体制を早急に整備、構築する必要があります。このような中、救急医療に関わる8学会(日本救急医学会、日本臨床救急医学会、日本集中治療医学会、日本外傷学会、日本集団災害医学会、日本中毒学会、日本熱傷学会、日本救急看護学会)と東京都医師会、東京消防庁からなる会議体、「2020年東京オリンピック・パラリンピックに係る救急・災害医療体制を検討する学術連合体(コンソーシアム)」が組織されました。コンソーシアムは、過去に我が国で開催された伊勢・志摩サミットなど国際会議の経験、リオデジャネイロやロンドンオリンピックでの救急医療体制の情報を収集し、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会時の救急医療体制のモデル案を提示することを大きな目的としています。2020年初頭からのCOVID-19流行のため、東京オリンピック・パラリンピックは2021年に延期されました。開催には厳重な感染症対策も求められる状況となり、コンソーシアムの果たすべき役割はますます重要になっています。今後も、関係各位の皆様はもちろん、多くの組織のご協力を頂き、作業を進めて参りたいと思います。
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一般社団法人日本外傷学会
代表理事木村 昭夫
一般社団法人日本外傷学会は,外傷学(Traumatology)に関する情報の収集,提供,および交換を行うことによって,外傷学ならびに関連分野の進歩,発展に貢献するとともに,日本国民の生命と健康の保全に寄与することを目的としています。現在,約2300名の医師が学会員として所属し,学術集会や各種委員会の活動を行っております。また,外傷診療におけるリーダーの養成を目指した外傷専門医の資格制度も運営しております。
東京オリンピック開催に伴ってテロの発生が危惧されています。本学会では,本邦で治療経験がほとんど無い銃創・爆傷に対して,これらの診療に精通したドクターで構成される特別委員会を立ち上げ,銃創・爆傷患者に対する診療ガイドラインを,プレホスピタル・インホスピタルに分けて作成し,順次公開していくこととしております。
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一般社団法人日本集中治療医学会
理事長西村 匡司
日本集中治療医学会は集中治療に関わる多職種の専門家団体です。現在の医療で集中治療室は必要不可欠ですが、ベッド数は限られています。多数の傷病者が発生した場合には最寄りの施設だけでは対応できません。今回のコンソーシアムにおいては、特に関東圏の施設を中心に密接な連絡網を確立し、効率よく重症患者の受け入れができるような組織を構築することで貢献したいと考えています。一概に集中治療室といっても特徴があり、対応できる病態や治療手段は異なります。これらのことも含めて、重症の傷病者が最適の治療を受けることができるように、我が国の医療レベルの高さを示せるように取り組みます。
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一般社団法人日本災害医学会
代表理事大友 康裕
日本災害医学会(Japanese Association for Disaster Medicine; JADM)は、会員数4,500人を有する日本医学会分科会に加盟する学会です。設立は、まずは日本集団災害医療研究会として1995年5月に旗揚げされ、その後、2000年2月に学会へ昇格しております。災害医学・災害医療に焦点を当てた学術集団で、災害に係わる問題を統括的に解決するべく医療従事者、消防関係者、防災行政関係者、防災研究者など多領域の研究者が集結し、国内はもとより国際災害にも目を向けています。この2020年東京オリンピック・パラリンピックに係るコンソーシアムの中での当学会の役割は、テロ等による多数傷病者対応(病院前・病院内)の体制作りとMass Gathering Medicineとして救護所における診療録の標準化、および患者情報の集計報告システム(東京オリパラ版J-SPEED)の開発です。他学会と協力、連携し、東京オリンピック・パラリンピックだけでなく、Mass Gathering Medicine全体の向上に貢献したいと思います。宜しくお願い致します。
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一般社団法人日本中毒学会
代表理事須﨑 紳一郎
日本中毒学会は臨床急性中毒を扱う本邦唯一の専門学会として1982年に設立され、1,000名の現会員を有します。私どもは自然毒、医薬品、農薬、家庭用・工業製品あるいは化学薬品など、およそ「生体に急性毒性をきたしうる」もの全てを対象とし、その疫学、病態、治療対処、発生抑止・予防などの検討・研究を重ねています。今回、2020年東京オリンピック・パラリンピック大会を迎えるに際し、日本救急医学会ほか関連学会・組織と緊密な協調を深めつつ、この分野で専門性を発揮することで些かでも社会に貢献できるよう期したいと思います。なお、特に懸念の高まっている化学災害(テロ)対応については、本学会と緊密な関係にある日本中毒情報センター(JPIC)が、これまでの実績を生かして対応に準備段階から主体的に当たって行くこととしています。
(TOPページバナーのベニテングタケ、アカクラゲは日本中毒学会臨床フォトライブラリー所蔵作品より学会の認諾を得て転載)
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一般社団法人日本熱傷学会
代表理事齋藤 大蔵
日本熱傷学会は、1975年に設立され、本邦の熱傷診療と研究をリードしてきた伝統ある学術団体です。近年、本邦においては重症熱傷の患者さんの発生は火に対する危険意識の高まりと社会的啓蒙によって、減少しつつあります。しかしながら、災害あるいはテロ発生時には多数の重症熱傷の被災者が発生するといわれています。2001年の米国同時多発テロ事件では入院症例の三分の一が重症熱傷であったとのことです。本邦では2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて、あってはならないテロの万が一の発生に備えなければなりません。日本熱傷学会のコンソーシアムにおける役割は、重症熱傷患者等の多数傷病者発生時における適切な分散搬送であり、この社会的責任を果たすための準備を進めたいと思っております。
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一般社団法人日本臨床救急医学会
代表理事坂本 哲也
日本臨床救急医学会は救急医療に関わる、医師、看護師、救急隊員・救急救命士、薬剤師、診療放射線技師、臨床検査技師、ソーシャルワーカーなど、多職種の関係者が会員となっている学術団体です。平成10年に発足し、現在、個人会員数は約3700名で、さらに組織会員として全国の消防本部が参加しています。多職種が協働して、病院前救急医療、チーム医療、各職種の救急認定制度、各種教育コースの策定等の活動を推進するとともに、年に1回の学術集会を開催しています。
本コンソーシアムにおいては、多職種が参画する学術団体である特色を活かし、以下のことに取り組みます。
- 大会前後に増大する救急医療ニーズを評価し、対応策について提言する。
- 円滑な救急搬送を行えるよう関係者の教育、体制整備について提言する。
- 宗教や言語、生活背景の異なる訪日外国人に対し、医療提供の際に生じる問題点を抽出、整理し、解決策を提言する。
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公益社団法人東京都医師会
会長尾﨑 治夫
東京都医師会は会員約2万400人で構成される医師の団体です。会員には診療所の医師、病院の医師をはじめ大学に勤務する医師がおります。
東京都医師会では、阪神淡路大震災を始め、中越沖地震、東日本大震災、熊本地震等の大規模災害においては医療救護班を派遣しました。また、東京マラソンなどの各種スポーツ大会等にも医療救護班を派遣しています。
2020年の東京オリンピック・パラリンピック大会にも医療救護班を派遣することが予定されております。
災害時医療、スポーツ大会開催時の医療に関する経験を生かして、日本医師会やこのコンソーシアム等の諸団体とも連携・協力し、来るべき2020年の東京オリンピック・パラリンピック大会に対処していきたいと考えています。
この大会については、傷病者の救護の他、多くの病気の原因となるタバコ対策、真夏の開催に伴う熱中症対策、たくさんの外国人が訪日する際の外国人医療対策を課題と考えており、内部委員会である救急委員会、タバコ対策委員会や外国人医療対策委員会等で検討を進めております。
開催地域の一時的な人口増加に伴う救急需要の増加に対応するとともに、その地域の通常の医療も維持できるよう、準備を進めて行きたいと思っています。
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公益社団法人日本小児科学会
会長髙橋 孝雄
公益社団法人日本小児科学会は、約22,000名の会員を有し、小児医療全般の進歩、発展をはかるとともに、子どもの健康・人権・福祉を守り向上させることを目的として活動しております。
災害や救急体制についても各種の委員会活動等を通じて具体的な提案、対応を行っております。2011年の東日本大震災や2016年の熊本地震では、被災地の小児医療を支えるために医師派遣などの支援を行い、さらに支援活動後の検証を通じて、災害体制における課題の抽出と解決策の検討を行っております。また、一般市民の皆様の小児救急全般に関する関心と理解を高めることを目的に小児救急市民公開フォーラムを定期開催しております。
2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けて、本コンソーシアム構成団体の方々と密接に連携し、万が一のテロや災害に備えた小児医療体制を構築したいと考えております。
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一般社団法人日本臨床スポーツ医学会
理事長川原 貴
一般社団法人日本臨床スポーツ医学会(以下、本法人と略す)は、平成元年に設立された日本臨床スポーツ医学会を前身とし、平成26年に一般社団法人として認可された医学会です。臨床スポーツ医学領域における研究の促進と情報交換を図り、スポーツ医学の進歩・普及とスポーツの発展に寄与し、国民の健康と福祉に貢献することを目的としています。会員数は約4350名で、臨床スポーツ医学に造詣の深い内科、整形外科、外科、産婦人科、小児科、精神神経科、リハビリテーション科、救急医学、眼科、皮膚科、歯科口腔外科などのさまざまな領域の医師、および理学療法士、アスレティックトレーナー、薬剤師、看護師などのコメディカルスタッフより構成され、東京2020においては、主に競技現場におけるアスリートのスポーツ障害の治療を担当する予定です。よろしくお願いいたします。
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一般財団法人日本AED財団
理事長三田村 秀雄
一般財団法人日本AED 財団は、心臓突然死から人々の命を救うことを目的として、AEDを活用した救命の仕組み作りと仕掛け作りに取り組んでいます。
東京マラソンではこれまで心停止に陥った市民ランナー11人中11人全員が現場のCPRとAEDで救命されていますが、100%の救命率を達成できた背景には大会前からの周到な準備、当日に各ポイントで待機していた大勢のスタッフ、自転車を導入した迅速なAED搬送などがありました。それらの経験をさらに応用発展させて、各種スポーツ現場におけるAEDの合理的配置、わかりやすいAED誘導標識や位置情報の公示、そして心停止の目撃時や通報時にいつでもどこでも迅速に救命処置を開始できる体制の確立を目指しています。
私ども日本AED財団は本コンソーシアムの一員として、日本がスポーツ現場における心臓突然死ゼロを達成できる国であることを世界に向かって示し、発信していきたいと考えています。
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日本蘇生学会
代表理事川前 金幸
日本蘇生学会は、日本麻酔科学会の諸先輩方が設立し、蘇生に関する研究、教育に携わってまいりました。今年で37年目を迎えます。現在に至るまで、本学会創設者の一人である岡田和夫氏が日本蘇生協議会を設立し、世界のデータベース作成とエビデンスの発信に尽力されました。さらに協議会に各団体を集結し、日本の心肺蘇生におけるガイドラインの作成と教育に貢献しております。我々は主に手術麻酔管理を中心として手術侵襲から患者を守るという立ち位置にあり、その知識と技術をもって集中治療、救急医療、ペインクリニック、緩和医療に貢献しております。いずれの領域においても蘇生は必須の項目であり、本学会でも研鑽を積んでおります。
オリンピックコンソーシアムの一団体として、東京オリンピックでは災害や事故が多発しても最小限に抑えることができるネットワークを組むことで、我々の力を役に立てることができれば幸甚に存じます。
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一般社団法人日本救護救急学会
理事長島崎 修次
日本救護救急医学会は、救護の現場においてメディカルコントロールによる質の担保を行う事で、救護・救急の充実と普及を目的とする学会である。
そして、同時に緊急事態に陥った現場において、医学的な質の担保(民間メディカルコントロール)の下に適切な応急手当等を行うファーストエイドを実践する資格(ファーストエイダーやファーストレスポンダー)の認定も行う事になっている。
近年になり心肺蘇生やファーストエイドも含め救急蘇生法の指針や蘇生ガイドラインにもその処置の根拠が示されるようになり、救護の現場における医学的な質の担保と体制整備が急務となっている。特に、スポーツ中の事故や学校内でのアレルギーによる生命危機に陥った際の職務上救護義務を有する者、いわゆる非医療従事者である一定頻度者の救護行為と責務が求められる状況にある。
このようなファーストエイドを実施する立場にある非医療従事者は民間救急救命士をはじめとして、自衛隊員、警察官、海上保安官、警備員、介護士、社会福祉士、ケアマネージャー、病院職員、学校教職員(養護教諭を含む)、保育士、駅員、ライフセーバー、登山ガイド、スポーツインストラクター、スキーパトロール及び消防団など多職種にわたる人々が挙げられるが、民間メディカルコントロールに係る医師とともに本学会の主要会員でもある。
来る2020年東京オリンピック・パラリンピックにはファーストエイドを実践できる多くのボランティアが必要とされると思われるが。その為には本学会は上述のような職種の方々をはじめとして同じ志をもつものが一体となって東京オリンピック・パラリンピック成功のため本学会への参加を期待するところである。
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一般社団法人日本航空医療学会
代表理事猪口 貞樹
日本航空医療学会は、わが国における航空機による救急医療システムの確立とその普及を図り、航空機に関連する医学、医療の向上に貢献することを目的とした学会です。
一般的な学術活動に加えて、航空医療にかかわる多くの職種(医師、看護師、救急隊員、操縦士、整備士、運航管理者など)を対象にした講習会や認定制度を運用しており、また全国ドクターヘリ基地病院、認定NPO法人ヘムネット、民間運航会社とともに「ドクターヘリ連絡調整協議会」を組織してドクターヘリ運航の円滑化を支援しています。
マスギャザリングにおいて、航空機による医療支援が必要な際などには、微力ながらお役に立てることもあろうかと思いますので、ご相談いただければ幸甚です。
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一般社団法人日本感染症学会
理事長舘田 一博
日本感染症学会は、1926年に日本伝染病学会として設立され、2013年から一般社団法人として活動しています。2017年末の会員数は11,000人を超え、設立以来一貫してその時代に問題となる感染症に関して臨床・研究活動を推進してまいりました。2020年東京オリンピック・パラリンピックでは、多くの旅行者・関係者が入国・出国することから、世界で問題となる感染症の持ち込み・持ち出しには特別の注意を払いながら対応していく必要があります。特に耐性菌、輸入感染症、バイオテロの問題は重要です。本コンソーシアムと連携・協力しながら、2020年東京オリンピック・パラリンピック感染症対策マニュアルなどの作成を通して、感染症に対する危機管理の視点で責任を果たしていきたいと思います。皆様方のご理解とご協力をどうぞ宜しくお願いいたします。
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一般社団法人日本外科学会
理事長森 正樹
一般社団法人日本外科学会は明治32(1899)年に創立され、現在は約4万名の会員を有して、様々な事業を行っておりますが、このたび、厚生労働省の「外傷外科医養成研修事業」の実施団体に選定され、外傷診療を担う医師なども育成することとなりました。
東京オリンピック・パラリンピックにおける救急医療体制の整備の一つとして、爆傷、銃創、切創などを受けた多数傷病者の診療に関わる外科医などの資質および技能の向上を図ることが必要ですが、我が国ではこれらについての知見が十分に普及しておらず、テロへの医療対応体制の底上げが求められます。そこで、救命救急センターに勤務する外科専門医と看護師を対象に、講習およびoff-the-job trainingを実施しております。研修修了者の名簿は厚生労働省と共有し、本学会のホームページでも公開しております。
この活動を通じてコンソーシアムに協力してまいりたいと考えておりますので、どうぞ宜しくお願いいたします。
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一般社団法人日本環境感染学会
理事長吉田 正樹
一般社団法人日本環境感染学会は感染制御領域としては世界最大規模の学会であり、 “感染制御、感染症予防、感染症危機管理に関する専門学会”として、学術研究の進歩発展、国民の健康増進及び公衆衛生の向上に寄与しています。今や、感染症は “グローバル化・ボーダーレス化” しており、2020年の夏季に開催される東京オリンピック・パラリンピックの際にもさまざまな感染症の発生リスクが高まることが懸念されています。そのため、特に、コンソーシアムにおける当学会の役割は、“感染制御・感染症危機管理の専門家集団”として、バイオテロを含むさまざまな感染症のアウトブレイク発生時において迅速かつ的確な対応を実践していくことにあると考えております。今後、コンソーシアムの専門学会の皆様方と連携協力して、安全・安心な体制の構築によりいっそう貢献してまいりたいと考えております。何卒、よろしくお願いいたします。
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公益社団法人日本整形外科学会
理事長松本 守雄
日本整形外科学会は1926年に設立され、2011年には公益社団法人となり、現在では世界でも有数の規模の運動器関連の学会へと発展しています。
整形外科医が関わる対象疾患は、脊椎や四肢関節の加齢性疾患、外傷、先天性疾患、骨軟部腫瘍、骨粗鬆症などの代謝性疾患、関節リウマチ・感染などの炎症疾患など多岐にわたります。また2007年に運動器の障害のため移動能力の低下をきたした状態であるロコモティブシンドロームの概念を提唱し、その予防・治療を通じて国民の健康寿命の延伸に貢献するべく活動をしています。スポーツ医学も重要な分野であり、多くの整形外科医がアスリートの外傷や障害の予防と治療、メディカルチェックなどを担当しています。2020年東京オリンピック・パラリンピックでは本コンソーシアム参加の諸団体の方々と協調しつつ、運動器医学・医療を専門とする学会として貢献したいと思います。
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一般社団法人日本病院前救急診療医学会
理事長中川 隆
日本病院前救急診療医学会は救急現場へ医師・看護師を派遣し、早期の医療介入による救命率向上を目指す学術団体であり、ドクターヘリ、ドクターカーなど移動手段を問わずより良い病院前救急診療システムを模索しています。
わが国は1992年に救急救命士制度が始まり、2001年にはドクターヘリシステムが導入され、病院前救急診療は着実に成果を挙げてきました。しかし、救急救命士が救急現場で実施できる行為には限界があり、ドクターヘリは夜間対応ができない、天候にも左右されやすいなど運用上の課題が残っています。ドクターカーはこれらの弱点を補い、救急現場で救急救命士らと協働し、適切な医療を早期に提供を可能にします。ドクターヘリの整備が一定の水準に達したことを見据え、私たちはドクターカーの社会的基盤整備が喫緊の課題と捉え、ドクターヘリとドクターカー併用による効果的運用システムの構築に寄与したいと考えています。
2020年東京オリンピック・パラリンピックのような国際的イベントでは、テロの発生、ならびに多数傷病者に備えねばなりません。本コンソーシアムの一員として、私たちは計画と準備、そして培った知識と経験を駆使し責任を果たします。
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一般社団法人日本脳神経外傷学会
理事長中瀬 裕之
一般社団法人日本脳神経外傷学会は、1977年に日本神経外傷研究会として設立し、2010年に一般社団法人日本脳神経外傷学会として新たなスタートを切りました。1960-70年代には「交通戦争」と呼ばれる悲惨な歴史を経験し、多くの脳神経外科医は重症頭部外傷の治療に日夜戦って参りました。しかし、近年では交通外傷の減少と高齢者の転倒・転落の増加により重症頭部外傷の病態や治療戦略も変遷しております。また、スポーツ頭部外傷による死亡事故や外傷後高次脳機能障害への社会福祉問題、あるいは神経集中治療の重要性など、当学会として取り組むべきトピックスも変化しております。このコンソーシアムの中で当学会は、脳振盪を中心としたスポーツ頭部外傷の予防と対応に関する啓発活動に力を注ぎたいと考えております。また、オリンピック開催に伴ってテロの発生が危惧されておりますが、頭部への銃創や爆傷について本邦では稀な病態ですので、医療スタッフへの教育も含めた体制作りが必要かと考えております。
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一般社団法人日本クリティカルケア看護学会
代表理事山勢 博彰
日本クリティカルケア看護学会は、集中治療を受ける患者や重症救急患者等に対するクリティカルケア看護学の発展に寄与することを目的に設立されました。臨床看護実践、看護研究、医療政策への関与など、多様な場面で学会が貢献することによって、看護の専門性を高め、看護師がより確かな知識と高度なスキルを身につけられるようサポートしています。
今回のコンソーシアムにおいては、現場でのファーストエイドや初療展開だけで無く、後方受け入れ施設でもある集中治療室等での看護師の役割が充分に発揮できるよう学会としてバックアップします。例えば、わが国ではほとんど経験の無い爆弾テロによる被害者に対する救命・集中治療看護、日本語が通じない重症患者への言語的・非言語的コミュニケーション方法など、クリティカルケア看護が果たす役割は重要と考えています。
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公益社団法人日本麻酔科学会
理事長小板橋 俊哉
日本麻酔科学会は周術期の患者の生体管理を中心としながら、救急医療や集中医療における生体管理、種々の疾病および手術を起因とする疼痛・緩和医療などの領域において、患者の命を守り、安全で快適な医療を提供することを目的として設立されました。2007年に公益社団法人となり、2018年10月現在の会員数は13,000人を超え、専門医、指導医数も8,000人を超えております。麻酔科医は手術麻酔を中心とした周術期管理のほか、救急医療、集中治療の場で、新生児から高齢者に至るまで、重症患者管理、鎮痛管理、安全管理において積極的に活動しております。2020年東京オリンピック・パラリンピックに係るコンソーシアムにおいては、東京を中心とする関東圏において、施設間の密接な連携網を確立し、他学会とも共同し、重症患者の手術対応や救急患者、集中治療患者受け入れに貢献したいと考えております。
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公益社団法人日本精神神経学会
理事長神庭 重信
学会は、今年で創設116年を迎え、日本の精神医学・医療の進歩、発展をはかるとともに、健康・人権・福祉を守り向上させることを目的として活動してきました。会員数約19,000名を数えます。本学会の諸活動が究極的にめざすところは、「当事者・ご家族から信頼していただける最善の精神医療をこの国に築く」ということにあります。
これまで、本学会では災害精神医学についても災害支援委員会の活動等を通じて、継続的に被災地の課題の抽出や解決策の検討を行い、被災地で「災害フォーラム」を開催したり、政策提言を行うなど、被災地の精神科医療を支援してきました。
オリンピックやパラリンピックのような国際的な大イベントでは、既存の精神障がいへの対応だけではなく、観客・選手など多くの外国人のメンタルヘルス不調や,災害やテロ発生に伴うメンタルヘルス問題など、さまざまなメンタルヘルス上の問題が想定されます。
本学会でもコンソーシアムへの参加を通じて課題の理解を深め、構成団体の方々や精神神経関連団体と密接に連携して準備を行い、2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催にあたっての一助となるよう努力したいと考えております。
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一般社団法人JPTEC協議会
代表理事益子 邦洋
一般社団法人 JPTEC協議会は、防ぎえる外傷死(Preventable Trauma Death:PTD)の減少を目的として、 Japan Prehospital Trauma Evaluation and Care(JPTEC)プログラムを用いた教育普及活動を行っております。
JPTECは、我が国のすべての病院前救護にかかわる人々が習得すべき知識と体得すべき技能が盛り込まれた活動指針となっています。
2020年東京オリンピック・パラリンピック開催中の救急災害医療体制に係る学術連合体(コンソーシアム)の中での本会の役割は、会場内外で発生する外傷に対応する救護スタッフや救護ボランティアに対して、適切に初期対応を行うための外傷研修プログラムを作成し、研修を担当する指導者を派遣いたします。
何卒よろしくお願いいたします。
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一般社団法人日本形成外科学会
理事長清川 兼輔
一般社団法人日本形成外科学会は、1957年に設立され、現在約5,000名の会員を有しています。形成外科は、身体に生じた欠損や変形などに対して、形態的にも機能的にも本来あるべき姿に再建修復し、また整容的によりきれいにすることによって、生活の質”Quality of Life”の向上を目指す、外科系の専門領域です。外傷、先天異常、悪性腫瘍切除後の再建などを中心に治療を行っています。特に、できてしまったキズや傷跡をいかに早く、美しく元の通りに直すかの治療を行っており、また鼻骨、頬骨、上顎、下顎骨など顔面の骨折の治療を行っております。このため、スポーツをされている方には、大変関わりのある科です。2020年東京オリンピック・パラリンピックで競技中に生じた選手のケガや顔面骨の骨折はもとより、観客の方のけがなどにも積極的に対応してゆきたいと思います。
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一般社団法人全国救急救命士教育施設協議会
代表理事田中 秀治
一般社団法人全国救急救命士教育施設協議会(Japan EMT School Association; JESA)は救急救命士教育の資質の向上と救急救命医療の発展を図ることを目的とした、救急救命士を養成する教育施設の協議団体で1996年に設立されました。2020年2月時点で全国の大学機関16施設、専門学校23校が所属しています。毎年1,500人の救急救命士を輩出しております。今後もJESAは全国の消防機関、警察機関、海上保安庁、自衛隊などの公的機関に求められる優秀な救急救命士を輩出しつづけるとともに、社会のニーズの変化によって拡大する職域や活動範囲に臨機応変に対応し社会に役立つ救急救命士を全国に送り出し続けます。
2020年東京オリンピック・パラリンピックに係るコンソーシアムでは、大会当日に活動されるメディカルスタッフ、ボランティアとしてオリンピックをサポートする方々を対象とした心肺蘇生、ファーストエイドに関する研修指導に当たります。また、大会当日は教員、学生を派遣し、2020東京オリンピック・パラリンピックを安全・安心の大会にすべく全力でサポートして参ります。
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一般社団法人日本蘇生協議会
代表理事野々木 宏
一般社団法人日本蘇生協議会(JRC、Japan Resuscitation Council)は、広く心肺脳蘇生の臨床、サイエンスに関わる学際的かつ公益性の高い学術団体として2002年1月18日に創設されました。JRC は、わが国の蘇生科学について研究、教育、実践の中心となっている20以上の学術団体ならびに医療関連団体(日本集中治療医学会、日本麻酔科学会、日本救急医学会、日本循環器学会、日本周産期・新生児医学会ほか)から構成されます。JRCは、国際蘇生連絡委員会(International Liaison Committee on Resuscitation, ILCOR)への窓口としての機能を有し、わが国の蘇生ガイドライン2020を策定しています。創設時から牽引してこられた岡田和夫名誉会長の行動力と情熱は、2014 年に野々木宏代表理事、坂本哲也執行理事が率いる現体制に引き継がれました。
2020年東京オリンピック・パラリンピックコンソーシアムでは、急変対応として求められる心肺脳蘇生は元より、脳卒中・循環器病対策基本法を踏まえた心筋梗塞、脳卒中や各種意識障害等への対策についてわが国のJRC蘇生ガイドライン等を踏まえて提言したい。
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一般社団法人日本循環器学会
代表理事平田 健一
日本循環器学会は、会員数が26,000名を超える、わが国の医学会を代表する学会です。日本循環器学会は、循環器病学の研究、診療のみならず、医療体制の整備やガイドラインの普及、多職種にわたる人材育成など、多くの社会的役割を担う責任があります。来る2020年夏季オリンピック・パラリンピックにおいては、救急災害医療体制の中で、開催中に発生する循環器系疾患に対して、適切に診療を行うためのシステム構築を行います。とくに急性心筋梗塞、急性大動脈解離といった緊急心血管疾患では迅速な診療体制が救命のカギを握ります。東京都CCUネットワークや大動脈スーパーネットワーク、他の開催地域の専門循環器治療システムを最大限に活かして、開催期間中の循環器系救急需要の増加に対応するとともに、通常医療の体制維持ができるよう、他の構成団体と共同し万全な体制で臨みます。
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2020年東京オリンピック・パラリンピックに係る
救急災害医療体制検討合同委員会
委員長森村 尚登
各構成団体の当該委員会から選出された委員から成る合同委員会は、本コンソーシアム活動のタスクフォースです。関連団体のそれぞれの専門領域の知見を集積し、具体的に提言をまとめて、マニュアルやセミナーなどを策定してまいります。また関連団体のみならずパブリックコメントの場を設けて広くご意見をいただきながら、多面的に課題を抽出し、より実効性の高い提言の策定を目指します。
期間中の開催地域の一時的な人口増加に伴う救急需要増加を念頭に置き、通常の救急医療システムの効率的運用、競技会場と周辺地域ごとの救急需要増大の程度予測、病院間連携体制の在り方、医療スタッフのための標準的救護マニュアル、病態別診療、同時多数傷病者発生時の地域・医療機関内運用体制、訪日外国人対応、開催中に収集すべき救急災害医療関連情報項目やそのモニタリング方法などについて検討し、順次指針やマニュアルとして提示していく所存です。また他国やWHOとも積極的に情報交換し、次回大会(2024年パリ)に繋げるとともに、今後の本邦における継続的なマスギャザリング医療対応の礎となる活動を目指し、今回の対応をレガシーとして残したいと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。
以上、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会開催(2021年9月)時点参画団体